血と炎

シナリオ



  プロローグ
緞帳降りたままで暗転の中、音楽が流れる。きっかっけで、緞帳が上がると。 舞台に客席に背を向け男二人が、ポーズのまま立っている。  舞台全面にドライアイス。照明は、ブルー系か白系。 上手にエリオ。下手にファノ。 エリオ白のブラウスにズボン。ファノ黒のブラウスにズボン。   ソロと二人の絡みで 激しく カッコヨク見せる。 音楽変わって、中央にエルビラ登場。照明は赤系かオレンジ系。エルビラ赤のドレス。 エルビラのソロからエリオ、ファノとのデョエット。 三人の絡みなどいれて、妖しく 色っぽく 激しく カッコヨク、見せる。 音楽終るときに三人、お互いに背を向けてポーズで。 カーテン閉まる。 第一場    メレンデス侯爵邸 A カーテン前 音楽流れて来る。カーテンを、割ってマリオ登場。 マリオ   「アモール」 続いて上手下手から。クレオ ルシオが登場。 クレオ  「アモール」 ルシオ  「アモール」 マリオ  「オラ!!セニョール。セニョリィータ。今夜は、僕たちと一夜の夢を見ましょう。」 マリオ クレオ ルシオの歌とダンスになる。 マリオ  『日が昇るように 僕達は 恋をする クレオ   昨日出会った娘と 今日出会う娘とは ルシオ   違っていても 仕方がないさ       僕達は 今 まだ若い       人生を 精一杯 楽しまなくては       そして何時かは 見つけるのさ       たった一人の 恋人を』 音楽終って。エリオがソニアとテオドールを連れて下手より登場。 エリオ  「相変わらず、騒々しい奴等だな。」 マリオ クレオ ルシオ。エリオに気付いて。 マリオ  「エリオ、おまえ生きていたのか!。」 エリオ  「マリオ、何て奴だ、友達が久し振りに、帰って来たっていうのに。」 クレオ  「エリオ、久し振り元気だったか。」 ルシオ  「父上の事聞いてるよ。その事で領地へ帰っていたんだろう。」 エリオ  「あぁ、無事にすべて済ませてきたよ。」 マリオ  「(溜め息)話がしめっぽくなるぞ。」 クレオ  「マリオ、いい加減にしろよ。」 ソニア  「(笑って)彼は彼なりに、エリオを、慰めてくれているのよ。」 マリオ  「ソニア。別に僕はそんなつもりわ。」 エリオ  「言われなくても分かっているさ。マリオの口の悪いのは、昔からだ。      ただ、僕が父が亡くなって、何時までも悲しんでいると思ったら大間違いだ。      父が悪いのは、前からだっからね。」 テオドール「しかし、父上がお亡くなりになったのは事実です。」 エリオ  「テオドール。分かっているさ。しかし、悲しんだって父上は帰っては来ない。      それより、僕たちが元気で生きてくのがなによりだと思うのだけど。」 ソニア  「そうよ、貴方達が仲良く暮らすのが叔父様にはなによりのたむけだわ。」 マリオ  「そしてエリオとソニアが無事に結婚して、めでたしめでたしだろう。」 ルシオ  「あぁ、そっちの話も聞いてる。ようやく婚約が決まったらしいな。」 クレオ  「おめでとう、エリオ、ソニア。」 ソニア  「ありがとう。」 明るく言ってしまって、少し気まずくなる。テオドール以外、笑って。 マリオ  「ちっえ、結局ソニアに、ノロケられてるわけか。」 エリオ  「ありがとう、ソニア。」 ソニア  「エリオ。」 呆れたような、やれやれと言う空気が流れる。少し間があって。 クレオ  「そう言えば、今日のパーティの主催者。メレンデス侯爵も奥方を披露するらしぜ。」 ルシオ  「披露ったって随分前じゃ無かったっけ?メレンデス侯爵の結婚って。」 マリオ  「前も前。4年、いや5年になるのかな。」 エリオ  「そんなになるのに、今更。」 クレオ  「なんでもその奥方を侯爵が見初めたのが、フランスへ向かう旅先だったって話だから。      そのままフランスへ連れて行って居たせいらしいけど。」 エリオ  「フランスへ?。」 テオドール「兄さん忘れたんですか?メレンデス侯爵家は王室とは縁続き。      僕たちの母上の又従兄弟になるんですよ。」 エリオ  「分かっているよ。しかし、フランスへ行く途中だったって事は奥方は、      フランスの女性なのかい?」 マリオ  「いや、違うらしい。聞いた話だけど彼女はジプシーだったと言う話しだ。 テオドール「メレンデス侯爵夫人が、ジプシー?そんな。」 マリオ  「侯爵が旅の途中で彼女のグループに出会って。そこで見初めて、奥方にしたらしい。      随分年が離れているのにね。侯爵がとにかく惚れ込んだと言う話さ。      妖しいぐらい、美しい女性だと言うからな。」 全員の中に緊張した空気が流れる。少し間があって。 メイドか侍従の声がして。 侍従   「メレンデス侯爵御夫妻。」 BGM。カーテン開く。   第二場    メレンデス侯爵邸 B  中央にメレンデス侯爵とエルビラが立っている。 そのまわりに、貴族や令嬢達が立って居る。 メレンデス侯爵「皆さん今夜は、私達のために、集まっていただいてありがとう。妻のエルビラです。」 エルビラ。会釈する。 メレンデス侯爵「エルビラ。皆さんにご挨拶しなさい。」 エルビラ  「はい。今日から、皆様のお仲間に入れていただきます。       どうかよろしく、お願いいたします。」 近くにいる人から、少ししづつ挨拶に来る。 メレンデス侯爵にエスコートされてエルビラ階段を降りて行く。 マリオ、クレオ、ルシオ達も、挨拶しようと近付いて行く。 エリオは少し遅れて。ソニアをエスコートして。挨拶をしようと侯爵とエルビラに近づく。 侯爵それに気付いて。 メレンデス侯爵「エリオ・セルバンティス伯爵でしたね。」 エリオ    「はい。」 メレンデス侯爵「お父上の事は聞きました。お気の毒なことです、若い頃は母上も御一緒に共に過ごした        ものです。若いがゆえに馬鹿なことをしたのも今では、思い出となってしまったのですね。」 エルビラ   「侯爵様。」 メレンデス侯爵「彼のお父上が先日お亡くなりになったのだよ。」 エルビラ   「そうですか。(ソニアに気が付いて。)こちらの可愛い方は。」 エリオ     「私のフィアンセの、ソニア・ジサントです。」             ソニア侯爵とエルビラに会釈する。 テオドール  「ジサント男爵家の、御令嬢です。」 エリオ    「テオドール。失礼、私の弟です。」 テオドール  「テオドール・セルバンティスです、よろしく。」 メレンデス侯爵「弟さんは、なかなかのお方ですな。」 テオドール  「ありがとうございます。」 少し、白ける空気が流れるが。エルビラとソニアが吹き出す。 それを合図にしたように、音楽が流れて来る。 メレンデス侯爵「ダンスが始まるようだ。エルビラ。」 エルビラをエスコートしてダンスに加わる。あちこちでカップルが出来。ワルツが始まる。 エリオもソニアをエスコートして加わる。テオドールは近くで、見ている。 ダンスの輪が出来。パートナーをチェンジして行く。 メレンデス侯爵は途中でダンスをやめて、中央で。人々を眺めている。 テオドールは、入れ違いにダンスの輪の中へ引っ張り込まれる。 エリオ、エルビラと組む。エリオの心の内に不思議な動揺が起きる。 パートナーを、チェンジして、音楽終る。  この時、テオドールはソニアをエスコートしている。  侍従が出て、食事を知らせる。 侍従     「皆様、広間にお食事の用意ができました。」 メレンデス侯爵「皆様どうぞ。たいしたおもてなしは出来ませんが。        フランスより随行したコックが今夜は腕を振るってくれました。」 人々は、メレンデス侯爵とエルビラについて上手退場。  エリオ、音楽が終った後も、呆然と立ち尽くしていたが、ソニアに即される。 ソニア    「エリオ?私達も行きましょう。」 エリオ    「ごめんソニア後で行くよ。先に行っててくれないか。」 ソニア    「気分でも悪いの?」 エリオ    「大丈夫。心配ないよ。すぐに行くから。」 テオドール  「ソニア。」 テオドールがソニアをエスコートして退場。 マリオ    「何ボーとしてるんだ。」 クレオ    「待ってるぞ!!」 ルシオ    「早く来いよ。」 などと声を掛けて三人共しっかり女性を連れて退場する。 エリオ暫く物思いに沈んだような間があって。独白。 エリオ    「どうしたんだろう。あの人の温もりがまだ残っている。エルビラ・メレンデス侯爵夫人。        噂どうり、いや、それ以上に美しい女だ。何故だ、何故あの人のことが頭から離れない。        心が騒ぐ。まさか?恋?そんな馬鹿な?僕にはソニアがいる。あの人はメレンデス侯爵夫人。        侯爵夫人なんだぞ。しっかりしろ、エリオ・セルバンティス。」 台詞の途中から曲が流れ出している。台詞終ってエリオの歌ソロになる。 エリオ    『指先が あの女を 覚えている         あの女の 髪の香りが 忘れられない         僕の中に 沸き上がってくるのは         何なのだろう         あの女を 想うと 心が震える         罪だと 分かっている         苦しむならいっそ 溺れてしまいたい         僕はあの女を 愛してしまったのか』 最後のフレーズに重ねるように、エルビラ出る。  エルビラ  「セルバンティス伯爵。いらっしゃいませんの、皆さんがお待ちですよ。」 エリオ。驚いて振り返り。エルビラに近づく。 エリオ    「メレンデス侯爵夫人。貴女だ、貴女だったんですか。」 エルビラ   「どうなさったの?」 エリオ    「侯爵夫人。」 エリオの中で押さえようとしていた感情が、エルビラの登場で、押さえ切れなくなる。 エリオ、エルビラの腕をとっさにつかみ。自分のほうへ引き寄せる。 エルビラの腰を抱きしめ自然にキス。エルビラ、エリオの気配を察して。 すんでのところで逃れる。エリオそのまま跪き、エルビラのドレスの裾にキス。 BGM。エルビラの動揺した表情を残して、カーテン閉まる。 第三場   ジプシー村 A カーテン前 暗転の中、音楽が流れてくる。 照明が入って、ジプシー娘が三人登場する。 ファニータは、上手。後の二人は下手から。タンバリンや、カスタネットを持っている。 ファニータの歌ソロ。 ファニータ 『サァ サァ 皆 此処へおいで        あたし達と 遊ぼう        酒はあるし 女もいる        ただし 気を付けな        油断したら        噛み付くよ        あたし達は あんた達が        思うほど やわじゃない        それでも いいなら おいで        酒を飲んで 一緒に歌おう        朝まで 踊ろう』 ファニータ以外の、娘達はコーラスとダンスで絡む。間奏で、カーテン開く。 第四場  ジプシー村 B ファノ中央に立っている。ファノの回りにジプシー達が思い思いの格好で居る。 ファノの歌ソロ。ファニータと娘達はダンスになる。 ジプシー達コーラスとして参加する者。手拍子を入れる者と様々。 ファノ  『俺達は 旅人さ       あの街 この街       風に任せて 旅をする       俺達にねぐらはない       そう あの空       この 大地が       俺達のねぐらなのさ       サァ 来い       共に 歌おう       共に 踊ろう       仲間がいれば それでいいさ                明日のことなど分かりはしない       今日が 幸せなら 良いじゃないか』 ジプシー達 『そうさ 俺達がいる(あたい達がいる)        酒もある        今 幸せなら良いじゃないか』 音楽が終ってファニータがファノの方へ飛んで来る。 ファニータ 「ファノ。」 ファニータ、ファノにまとわり付くように甘える。 ファノ、それをあやすように離して。その間に、メリッサが近づく。 メリッサ  「ファノ。どうだい、皆落ち着いたかい。」 ファノ   「なんとかな。」 メリッサ  「この辺も、あんまり変わってないね。」 ファニータ 「メリッサは、昔この辺に来たことが、あるのかい。」 メリッサ  「昔、そう、随分昔になるんだね。」 ファノ   「俺が、ガキの頃のことだ。」 ファニータ 「ファノ。此処からかい、あん他達が南に流れてきたの。」 メリッサ  「そうだよ。そこでファニータの親父さんに拾われたんだ。ファノと……。」 ファノ   「エルビラ。」 メリッサ  「あぁ、そうさ。」 トマス   「エルビラなら、帰ってきてるらしいよ。」 メリッサ  「あの子が?」 トマス   「侯爵と一緒にね。ゆうべ、近くのお屋敷があんまり賑やだったからちょっと覗いてきたんだ。       そしたらエルビラがいたってわけさ。」 メリッサ  「そう。」 ファニータ 「メリッサには悪いけど。あたしはあの女嫌いだね。ファノと一緒になるはずだったんだ。       それなのに、金持ちの男と一緒になって。」 ファノ。ファニータを平手打ち。 ファニータ 「なにするんだよ。」 ファノ   「今更言うな。あんな奴でも、俺の女だったんだ。それに今は、おまえが居る。」 ファニータ 「ファノ。」 ファノ。ファニータを抱き寄せる。ファニータ微笑んで甘えるように、ファノに腕を回してキス。 ファニータ 「ファノ、そう言ってくれるんなら。あん他の腰の品。あたしにくれてもいいと思うんだけど。」 ファノ   「これはまだだ。さっきみたいじゃあてにできないしな。」 ファノの腰に、値打ち物のネックレスが付いている。 ファニータ 「あたしは、あんたの女だろ。」 ファノ笑って、取り合わない。その時、ジプシー達の間で喚声が上がる。 トマス   「エルビラだ。」 エルビラ。侯爵夫人の時と違ってかなり軽装で登場する。メリッサが、大喜びで迎える。 メリッサ  「エルビラ。久し振りだ、元気だったかい。」 エルビラ  「メリッサこそ。皆が来てるって聞いて、抜け出して来たわ。」 ファノ。エルビラに近づく。ファニータ止めようとするが。 ファノ   「エルビラ。」 エルビラ  「ファノ。」 二人の間に、妖しい炎が見えるような二人の視線を残して。 BGM・カーテン閉まる。




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